認知バイアスというのは、固定観念(先入観)によって物事を客観的に見ることができず、事実とはかけ離れた解釈をしてしまうことを言います。
以下がWikipediaより抜粋した認知バイアスの説明です。
認知バイアス(にんちバイアス、英: cognitive bias)とは、認知心理学や社会心理学での様々な観察者効果の一種であり、非常に基本的な統計学的な誤り、社会的帰属の誤り、記憶の誤り(虚偽記憶)など人間が犯しやすい問題である。転じて認知バイアスは、事例証拠や法的証拠の信頼性を大きく歪める(参照;Wikipedia)
私たちは過去の経験や記憶によって積み上げられてきた思考パターンの呪縛から逃れられないので、どうしても認知バイアスが働いてしまいます。
従って、認知バイアスが強く働いている場合、目の前で展開されている値動きに対して、客観的な判断を下すことがほぼ不可能になります。
客観的な判断ができない状態というのは、言い換えれば感情的な判断をしていることになります。つまり、自分にとって都合悪い情報を無視し、都合のよい情報にだけ目が行ってしまう状態です。
認知バイアスの発生メカニズム
認知バイアスのこのような働きは、どうして起こってしまうのでしょうか?
その根本にあるのが「苦」です。私たち人間はみな、苦を忌み嫌います。つまり、意識的にも無意識的にも苦から逃避するアクションを取ります。
ほとんどの投資家がロスカットできずに大きな損失を被ってしまう理由が、苦からの逃避行動にあります。
しかし、苦は逃げれば逃げるほど追いかけてきます。それは、まるで「いじめっ子がいじめられっ子の苦しむ姿を見て楽しんでいる」かのようです。
そうです。いじめっ子はいじめられっ子の苦しむ姿を見るのが楽しくていじめているのです。ですから、もしいじめられっ子が何も反応しなくなったら、つまらなくなっていじめるのを止めてしまいます。
やや話が逸れましたが、つまりこういうことです。
苦から逃げていては、いつまでも苦は追いかけてきます。従って、いつかは苦を受け入れる必要があります。
トレーダーとして生き残るためには、苦はいつかは乗り越えなければなりません。
認知バイアスの種類
認知バイアスにはいくつか種類があります。
ここでは、その代表的な5つの認知バイアスを選んで解説してあります。
- 一貫性バイアス
- 確証バイアス
- フレーミング効果
- 損失回避バイアス
- アンカリング効果
それでは、これらの認知バイアスについてお話していきましょう。
一貫性バイアス
一貫性バイアスの定義は以下の通りです。
ある人物の過去の態度や言動が、現在もそのまま同じように保たれていると信じていること
これを株式投資に当てはめてみると、以下のようになります。
ある銘柄の価値が、現在もそのまま同じように保たれていると信じていること
「銘柄に惚れるな」という相場格言があります。この格言はまさに一貫性バイアスへの警鐘と捉えることができます。
過去に買って大きく利益を得ることができた銘柄は、「ずっと株価が上昇する」という思い込んでしまいがちなのです。
確証バイアス
確証バイアスというのは、自分にとって都合の良い情報ばかりに目が行ってしまい、都合の悪い情報は無視してしまうことを言います。
こちらはWikipediaによる定義です。
仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のこと。
例えば、ある銘柄を買った後、株価が思惑に反して下落してしまったとします。投資家はその銘柄に関する情報収集を行うのですが、自分に都合の良い情報ばかりをかき集める傾向があります。
そのようにすることで、心理的な安息を得ようとしているのです。
このような確証バイアスを避けるためには、常に好悪両方の情報を収集し、それらを先入観を持たずに理解・分析します。
フレーミング効果
フレーミング効果というのは、同じことであるのに表現を変えることで違った印象を与える効果のことです。
有名な話に「水が半分入っているグラス」があります。
- グラスに水が半分しか入っていない
- グラスに水が半分も残っている
これらは2つとも同じ状態を言い表してしますが、異なった印象を与えます。
フレーミング効果を株式投資に当てはめてみましょう。
フレーミング効果とは、価格変動を長期的視点で見るか、短期的視点で見るかによって人間の意思決定が変化する心理的バイアス(参考文献;「人口市場での株取引におけるフレーミング効果に従う投資家エージェントの影響」)
例えば、先日バフェットが航空株(デルタ、アメリカン、ユナイテッド、サウスウエスト)を全て売却したことが話題になりました。
バフェットの投資法は「10年後を見据えて株を保有する」長期的視点がベースです。つまり、彼はこれから航空業界は今までのようにはならないと考えているからこそ、全ての航空株をロスカットしたわけです。
しかし、短期的に航空株が売られるかどうかはわかりません。
ただ、バフェットのような稀代の天才投資家が航空株をロスカットしたというのを知れば、多くの投資家は等狼狽売りしてしまうことでしょう(これがフレーミング効果です)。
損失回避バイアス
人間は損失に対して非常に強い心理的ストレスを感じます。
以下の表は人間がストレスを感じる項目です。順位が上ほどストレスは強くなります。
この表を見てもわかるように、ほぼ全ての項目が何らかの喪失に関係しています。
トレードにおいて避けて通れないのがロスカット(損失確定)ですが、多くの投資家が損失を確定できないのは、損失確定バイアスの仕業です。
なぜなら、損失確定は非常に強い心理的ストレスを生じさせるからです。
ちなみに、損失回避バイアスは「プロスペクト理論」にも通じています。
アンカリング効果
Wikipediaからアンカリング効果についての説明を抜粋しておきます。
アンカリングとは、 アンカーと呼ばれる先に与える情報が判断を歪めアンカーに近づく心理学の現象のこと。アンカリングとは認知バイアスの一種であり、先行する何らかの数値によって後の数値の判断が歪められ、判断された数値がアンカーに近づく傾向のことをさす。
例えば、定価が1000円だったものが500円で売っていたら、多くの人は「安い!」と感じると思います。
これは株価も同じです。いわゆる「値ごろ感」というものです。
株を値ごろ感で買ってしまうことがありますが、これはアンカリング効果によるものです。
株は、過去の株価との比較ではなく、現在の市場価値と将来性を調べた上で買うべきなのです。
まとめ
- 一貫性バイアス
ある銘柄の価値が、現在もそのまま同じように保たれていると信じていること - 確証バイアス
自分にとって都合の良い情報ばかりに目が行ってしまい、都合の悪い情報は無視してしまうこと - フレーミング効果
価格変動を長期的視点で見るか、短期的視点で見るかによって人間の意思決定が変化する心理的バイアスのこと - 損失回避バイアス
トレードにおいて避けて通れないのがロスカット(損失確定)ですが、多くの投資家が損失を確定できないのは、損失確定バイアスの仕業 - アンカリング効果
先行する何らかの数値によって後の数値の判断が歪められ、判断された数値がアンカーに近づく傾向のこと
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